ここ数年でパナマ帽を被る方も、一昔前に比べて増えてきたように思います。
ですが、パナマ帽がどのような過程で作られているか知っている方はそう多くないと思います。
こちらのページでは、弊社が取引をしているモンテクリスティの職人が、
どのような行程でパナマ帽を作っているかをご紹介しています。
どうぞご覧になってみて下さい。
エクアドルのマナビ地方にある小さな町、モンテクリスティ。そこから車で約1時間から1時間半程の場所にある山へ行くと、パナマ帽の原材料であるトキヤ草(本パナマ)を栽培している農家があります。
エクアドルの首都のキトは標高が2,800mありますので、日中はともかく日が落ちると寒いくらいです。
こちらのマナビ地方は標高もそこまで高くないのと、エクアドル自体赤道上にある国なので、ここは当然ですが暑いです。
山に到着すると、適当な場所に車を置いて徒歩で山の中を散策します。
トキヤ草の農家の場所によっては、農園まで車で行くのが困難な場所もあります。
このような場合は農園まで徒歩で向かいます。
トレッキングは好きなのですが、さすがにこの日は暑すぎました。
トキヤ草農家に到着すると、このようなシダの葉のような植物があります。
これがトキヤ草(本パナマ)と呼ばれている植物です。
この写真の手前にある茎のようなものが原材料として使われます。
これは葉っぱが広がる前の段階の物です。
この葉っぱが広がる前は中身が白くて柔らかいので、この部分を原材料として使います。
青々と広がっている葉っぱは材料としては使えません。
農家で材料を伐採をさせてもらった物を束ねるとこんな感じです。
見た感じはかなりきてるおばちゃんですが、いいおばちゃんでした。
暑い中、山を歩き回っていたので、ここでみんなで飲んだビールはとても美味しかったですね。
車を運転してくれてるアミーゴたちもビールを飲んでましたが、ここではそんな細かい事は気にしていないようです。
この暑さでは誰でもビールくらい飲みたくなるのもわかります。
トキヤ草を地面にバシッと叩き付けると、このように簡単にバラっと広がります。
これはこれから葉っぱがはがれて広がるであろうとゆう状態です。その葉っぱが膜のようになっていて、外側から断面のように見えると思います。
中身はまだ薄黄色っぽい状態で柔らかいので、これが使える材料になります。
1回バラすと簡単にバラバラになります。
ですが、まだまだ細かく薄くバラけるようになります。
これでパナマ帽の原材料はどのようなものか掴んで頂けると思います。
材料を持ち帰ってからは、早速使える部分と使えない部分との選別作業です。
トキヤ草を裂きながら使える部分と使えない部分を手際よく選別していきます。茎の外側の青い部分は使えませんが、中身でも微妙に使えない部分もあるようです。
この選別作業が実に早い。
見てて思いましたが、こーいった選別作業はおっちゃん達よりおばちゃん達の方が思い切りもよくて大胆に裂いて選別していきます。
1本のトキヤ草を裂いていくと、このように綺麗に中身が現れます。
これでもまだ完全に全部の膜を剥がしきれていませんが、ひとまずは裂きながら使える部分を残して選別していきます。
トキヤ草を一通り裂いて選別した後は、煮えたぎった大釜のお湯の中へトキヤ草の束を突っ込みます。
長い時間茹でるのではなく、約20秒ほどお湯にくぐらせる感じです。
お湯にくぐらせることによって色が少し抜けます。
そしてまだ剥がしきれていない葉っぱの膜が、ふやけるといいますか、柔らかくなってはがれやすくなります。
お湯にくぐらせた後は陰干しです。
ゆっくり乾かしながらまだくっついている膜のような葉っぱをはがしていきます。
私もやり方を聞いてはがすのを手伝いましたが、地味に骨の折れる作業です。
ここから半日陰干しをしてトキヤ草を乾かします。
陰干しをして乾いたトキヤ草を、今度は大きな木の箱に立てかけるように並べます。
この箱の中に火をつけた硫黄の粉末を入れてから、箱の上にブランケットをかけてトキヤ草を煙で燻します。
これは箱の中で硫黄を燃やして二酸化硫黄の気体を発生させてトキヤ草の色を抜く作業です。
これは約3時間程煙で燻します。
煮えたぎった大釜にトキヤ草を入れて陰干しして、乾いたら箱の中で煙で燻す。
この行程を3回繰り返して、ようやく色が綺麗に抜けたトキヤ草の藁が出来上がります。
こうして出来上がるのがパナマ帽の材料となるPaja Toquilla(トキヤ草の藁)です。
材料として出来上がったトキヤ草の藁を、今度は手編みで編んでいきます。
藁を手に取って、それをテンポよく編んでいきます。長さが足りなくなってきたら1本ずつ足して編み込んでいきます。
この地方で帽子作りを生業としている人達にとって、帽子を編むのは子供の頃からやっているそうです。
年配の方々はこの道数十年とゆうベテランなので、編むスピードは本当に早いです。
帽子の躯体の木型の下の台を自分用の高さにしていますが、この姿勢で編んでいくのは大変です。
帽子の躯体が出来上がるとこんな感じです。
ようやく帽子の原型らしくなりました。
編み目もきめ細かくていい出来です。
ここから好みの型に成形しますが、その前にやることがあります。
縁の仕上げをした後に余分なトキヤ草の藁を切り落とします。
帽子の裏側にも余分なトキヤ草の藁が突き出ているので、それらの無駄な部分も削ぎ落として段々帽子の躯体らしくなっていきます。
無駄な部分を削ぎ落とした後に、帽子を木のハンマーで叩きます。
これをすることによって、帽子の目が詰ってしなやかさも増します。
モンテクリスティのパナマ帽のしなやかさは、編み目の細かさはもちろんですが、こーいったひと手間によって品質が保たれているように思います。
ここまで出来上がるとあとは帽子の成形ですが、タイミングが悪く成形しているところを見ることはできませんでした。
これは成形した帽子の仕上げをしてるところです。
またモンテクリスティに行った時に、成形の写真を撮ってきますので、それはまた後日までお待ち下さい。
仕上げが終わって完成です。
パナマ帽と一口で言ってもピンからキリまであり、編み目の細かさで値段も変わってきます。
高額のパナマ帽になると、布に近い感じもありますが、それでいてちゃんと型も保っています。本当に薄くて軽くて、帽子を被ってる感じがしないくらいです。
まさしく職人技といって過言ではない、素晴らしい帽子です。
エクアドルのモンテクリスティで作られているパナマ帽は、世界一の品質と言われています。
材料を作るところから編み込みまで、機械を使わずほとんどが人の手によって作られている為、サイズ感やブリムの広さ等、全てにおいて若干の個体差がありますが、これもまたモンテクリスティのパナマ帽の魅力の一つでもあります。
南米のユルい風土がそうさせる部分もありますが、モンテクリスティのパナマ帽を作っているのは大きなファクトリーといった所で作っているわけではないところです。
厳密に言うと、モンテクリスティにいる職人はもちろんですが、モンテクリスティ周辺に点在している小さい村に住んでいる人達が内職のような感じで帽子を編んでいるのです。
もちろんそこに住んでるからといって、誰でもできるわけではありません。
帽子作りに携わっている家の人達や、パナマ帽の職人になる為に修行してる人達が帽子の躯体を編んでいたりします。
ある一定以上のレベルの物や、帽子の成形に関しては職人レベルの技術がないとできません。
中には本当に凄腕の職人もいて、その人が作るパナマ帽は数十万円から百万円レベルの物を作ります。
そんな事もあり、短期間で大量に作れないところが悩ましいところでもあり、また魅力的でもあるのです。
パナマ帽の職人になるには、職人に師事して資格を得る必要があるようです。
そこではじめて正式にマエストロ(職人)の資格を得ることができると聞きました。
若いうちから修行を始める人がほとんどですが、
ある程度の年齢から始める人もいるようですが、それは人それぞれといった感じですね。
モンテクリスティは小さい町ではありますが、パナマ帽のお店がチラホラあります。
その中でもひと際小さなお店をやっていたのが弊社が取引している職人です。
モンテクリスティではいくつものお店を見て回りましたが、彼の作るパナマ帽が品質とコストのバランスが一番良かったです。
そして何より彼とはウマが合いました。
まだ若い職人ですが、いろいろなことにチャレンジしてくれる気概も持っています。
連日、仕事の話や仕事以外のいろいろな話をしました。
彼と彼の家族に知り合えたのは本当に良かったと思います。
これからも永く良い付き合いができますよう願うばかりです。
もう少しわかりやすく簡潔にまとめたかったのですが、写真と説明と伝えたいことがたくさんありましたので、つい前のめりになってしまいました。
パナマ帽に関して、少しでも多くの知識とご理解をいただきたいがゆえとご理解ください。
ここまで読んでいただいた方は、パナマ帽をすでに持っている方と、これから購入を考えていらっしゃる興味のある方とそれぞれだと思います。
このページがパナマ帽に興味を持ってご覧になっていただいた全ての方の一助となれば幸いです。
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